カフェテリアの一角から真新しい修繕の跡が残るスラッセンの街並みを眺め、軽くタバ コをふかす。ごくごく小さいものだが人類が初めてネウロイから奪還した場所だ。 (さて…頼まれた物は買ったことだ。帰ろう)  灰皿にタバコを押し付け席を立ち、カップに残るコーヒーを流し込む。行儀が悪い、と いう目で見られた気がするがそんなものは気にしない。エリザベス・F・ビューリングは そういう女だ。  余分に硬貨を置いてさっさと店を出る。夜にはまだ遠い時間。ブリタニアではお茶会な どをやっていそうな時間だなと頭の隅に浮かぶ。  復興の活気に満ちる街を見渡しながら歩いていると、ショーケースに少々古臭いパイプ を置いている店を見つける。  ブリタニアのことを思い出していたせいか、昔の上官の顔が浮かんでくる。あの男は私 がいなくなったおかげで上物のパイプに変えることができたのだろうか。余裕があれば、 殊勝な言葉を並べた手紙と一緒に適当な物を送ってやろうかと考える。さぞ不気味がるこ とだろう。  そのときの元上官の顔が思い浮かび、にやりと口の端が歪む。いつかやろう。  浅く頷いて、私はショーケース前を離れ、街外れのスタンドに放置しておいたジープへ 向かった。  スラッセンの住人はそのジープがカウハバ基地のものと分かっているのか、車の中に手 紙やらお菓子やらが放り込まれているときがある。今日もいくつかの手紙と飴の箱が置い てあった。 (悪いが、サルミアッキはエルマ中尉行きだな)  ハッキネン少佐やアホネン大尉も食べるのだろうか。そんなことを考えながらジープに 乗り込もうとすると、後ろから声がかかった。 「あの…カウハバのウィッチさんですよね?」  振り返ると、短くはあるが、見事なアッシュ・ブロンドの少女が一輪の花を携えてこち らを見ていた。 「確かにカウハバ所属のウィッチだが……」  何か用か、と尋ねると持っていた花を差し出して、 「あのっ…! いつも街を守ってくれてありがとうございますっ」  そう、礼を言ってきた。  軽く面食らったが、 「いや、任務だ」  冷静に答えて花を受け取る。純白の百合だった。 「いえっ! たとえお仕事でも、やっぱりウィッチの方は感謝されるだけのことをしてい ますっ!」  何やら必死だ。昔はこういうことをされても鬱陶しいと思っただけだろうが、こちらに 来て戦うようになってからは、私も随分と素直になったと思う。 「……そうか。ありがとう」  礼を言ってジープに乗りエンジンをかける。灰髪の少女は少しだけ後ろに下がると、 「頑張って下さいっ!」  と叫び、ぶんぶんと手を振り回した。  こちらは手を上げて応え、ジープを出す。  少女は見えなくなるまでミラーの中で手を振っていた。 「あ、お帰りなさぁい」 「ああ」  部屋には、私の持っている一輪挿しの百合を見て、不思議そうな顔をしているエルマ中 尉だけがいた。  トモコはいつも通りハルカとジュゼッピーナに追い回されているのだろう。ウルスラは ハンガーで見かけた。何かまた実験をするのだろうか。キャサリンの姿は見えなかったが、 おそらくそれに付き合っているのだろう。 「珍しいですね、それ扶桑の花ですよ?」 「単なるリリーじゃないのか」  私は花の種類に明るい訳でもない。エルマ中尉は笑みを浮かべて頷いてきた。 「はい。扶桑のテッポウユリです。ブリタニア語ではイースターリリーと言います」 「ふぅん……?」  気の無い返事を返し、とりあえずその辺りに花瓶を置く。と、エルマ中尉が何やら良い 笑顔でこちらを見ていた。 「イースターリリーの花言葉は純潔・甘美・威厳です」  ビューリング少尉は想われていますね。にこにこと笑いながらそう言ってきた。  その言葉に覚えず頬が熱を持つ。それをエルマ中尉に悟られまいと顔を逸らし、イース ターリリーとやらを見つめる。 (純潔・甘美・威厳、か。どれも私らしくないような気がするな)  果たしてあの少女は私にどの言葉を奉げたのだろうか。ややくすんだ銀髪を後ろに流し ていた少女の顔を思い浮かべるが、分からない  考えることを放棄して、どこかで聞こえる爆発音を聞き流しながら目を閉じた。 (まあ…いいか…) ねんのため ビューリングさんは花屋の娘に云々かんぬんみたいなネタ見て適当にでっち上げた エルマさんは花言葉に詳しそうですよね脳内設定ですけど 逆にビューリングさんは英国人でも詳しくなさそうです 個人的にはビューリングさん×エルマさんがいいですね こうビューリングさんからキスをして、 「んっ、タバコのにおいです…」「嫌いか?」「貴女のは好きです」 みたいなうふふっうふふふふふふふふ ベタですけどね …威厳はアリですよね多分いやまあおそらく純潔でしょうしいや甘美かどうかは不明ですが