第6話「いっしょだよ」の見えないところで暴走しまくるよしこ。 妄想分過多。 1944年8月17日 サーニャの部屋兼・臨時夜間専従員詰め所 「…ん…?」 空腹のせいか目が覚めた。 目線を下ろすとサーニャちゃんがぬいぐるみを抱いて寝息を立てている。 どれくらい寝たんだろう? 確かどの部屋にも壁掛け時計があったはずだから、寝起きの焦点が合わない目で暗い部屋を見回した。 見つけて確認するとあと5分ほどで長針と短針が真上を向く時間。 (弱ったなぁ…今夜のために寝ておかなきゃいけないのに…) 腹時計の正確さに内心愚痴って寝返りを打つと、目の前にエイラさんの後頭部があった。 (…サーニャちゃんはわかるけど、エイラさんも夜間哨戒慣れてるのかな?) 普通なら朝から寝ろだなんて無理な注文だと思う。 けどわたしと一緒に急にシフト変更したのにぐっすり寝てる…。エイラさんって順応性高いんだなぁ。 確か15歳って言ってた気がする。わたしよりひとつ上なだけなのにやっぱり軍人さんってすごいな…。 そんな事を考えながらエイラさんの綺麗な銀髪を眺めてた。 (絹糸みたい) カーテンの隙間から洩れる日光が、さらさらの髪に反射してキラキラ輝いててすごく綺麗だ。 いつもぶっきらぼうで男の子みたいな喋り方のエイラさん。 けど長く伸ばした髪の毛がエイラさんのイメージとちぐはぐで、なんだか可笑しかった。 「ん…」 寝言。何か夢でも見てるのかな? そう思った瞬間ごろんとエイラさんが寝返りを打った。 不意に向かい合う形になってびっくりして声が洩れそうになる。 気持ち良さそうに寝てるから起こすのも悪いので口を堅く絞る。 「んぅ…サ…ニャ…」 サーニャちゃんの夢を見てるみたいだ。 本当に仲がいいんだな、って思うと何故か顔がにやけちゃう。 微笑ましいっていうのかな?ちょうどシャーリーさんとルッキーニちゃんを見てるような感覚。 エイラさんとサーニャちゃんは故郷が近いからか、髪の色も肌の色も二人はとても似ていて本当の姉妹みたい。 じっと動かずにいると、すぐに寝言がすぅすぅという寝息になる。 ほっとしてエイラさんの顔をぼーっと見つめた。 なんだか見ていたかった。 寝息に混じってハッカみたいな歯磨き粉の匂いと、かすかに残るブルーベリーの甘酸っぱい香りがわたしの鼻をくすぐる。 う…よく考えるとすごく顔が近い気がする。 寝る前にタロットで占ってもらったけどその時と同じくらい?でもあの時よりなんだか意識しちゃって変な気分だ。 (どうしよう、わたし、口臭くないかな?汗のいやな臭いとかしないかな?) なんだかどきどきしてきた。汗が噴き出す。 動いたら起こしちゃいそうで、動けずにその状態で固まるわたし。 何やってるんだろ…。そう思いながらも何故かどきどきは収まらなかった。 (…睫毛長い…肌もきれいだな…) 目のやり場に困ってきょろきょろするけど、どこを見てもエイラさんの顔が見えてしまう。 目を閉じてみれば今度は甘い香りと近くに聞こえるいつもの声よりちょっとだけ高い寝息の二重攻撃。 どうにかなりそうだった。 うう…なんでこんなに意識しちゃうんだろう…女の子同士なのに…。 (寝返りしちゃおうかな…それくらいじゃ起きないよね…?) 目を瞑ってそんな事を考えていたら不意にシーツが擦れる音がしてぐいっと体が引き寄せられた。 「…ふぇっ!?」 びっくりして思わず声が出てしまった。 顔に柔らかいものが当たる。目を開けてみると薄水色の布地。…えーと、これはどういう…? 「…さにゃー…」 「はぅ…」 つむじのあたりにぬるい風が当たる。 ぴくっと体が震えて、変な声が口をつく。 ぐるぐる回って混乱する頭で、寝ぼけたエイラさんにぎゅってされたんだな、となんとか理解できた。 (…夢の中でサーニャちゃんを抱きしめたのかな?うぅ…どんな夢見てるんだろう…) わたしの頭に鼻をうずめて、くんくんって犬みたいに臭いを嗅がれる。 うわわわわ!は、恥ずかしくて顔が熱くなるのがわかるよ…だ、だめ、もう限界…! 「ぅ…エ、エイラさん、あの、離してくだ…さぃ…」 ぴったりくっついてて、どきどきしっぱなしの胸の音を聞かれてしまいそうで、つい喋ってしまった。 「ん…サny…?…なにしてんだミヤフジ…」 寝起きでぼーっとしながらだけど、エイラさんがやっと気づいてくれた。まだ抱きしめられたままだけど…。 「うぅ…それはこっちのセリフですよぅ…」 「…いま何時?」 「お、お昼ですけど…」 「…そっか…んじゃもっかい寝る…」 「は、離してくださいぃー!!」 インクをこぼしたみたいな黒一色だった。 真っ黒な空は曇っていて月も星も見当たらない。 ちかちかと点灯していく誘導灯が星みたいで、どっちが空だかわからなくなる。 「ふ、震えが止まらないよ…」 「なんで?」 「夜の空がこんなに暗いなんて思わなかった…」 「夜間飛行、初めてなのか?」 どこまでも広がる青い空。やさしく流れる白い雲。それしか知らなかった。 毎晩見てるはずなのに、わたしの知ってる空とは全然違ってて、凄く怖かった。 「…無理ならやめる…?」 サーニャちゃんはそう言ってくれたけど、あとほんのちょっと勇気を出せば飛べる気がする。 「て…手、繋いでもいいかな?」 震えながらもなんとか声が出せた。 「えと…サーニャちゃんが手、繋いでくれたら大丈夫、だから…」 エイラさんは寝ぼけて覚えてないかもしれないけど、お昼の事があってまだエイラさんのことを意識しちゃってるのかもしれない。 だから”二人が”とは言い出せなかった。 「ぇ…」 うぅ…年上のくせに怖がりで、恥ずかしい…まともに二人の顔が見れないよ…。 じっと震える自分の手を見つめていると、ふと右手に掌が重なる。 はっとして顔を上げるとサーニャちゃんが手を繋いでくれていた。 少しびっくりしたけど、右手から伝わるわたしより少し高めのサーニャちゃんの体温が、不思議と心を落ち着けてくれた。 「む…」 いつのまにかわたしの左に移動したエイラさんが空いた左手をぐいっと引っ張った。 ちょっと痛い。 「ぅうえ…?」 「さっさと行くぞ!」 「うん…」 二人のストライカーの魔導エンジンに魔力が注ぎ込まれる。 どるん、どるるんとわたしたちの箒が羽ばたきを始めた。 「えっ!ちょ、ちょっと!?」 わたしの手を引いて二人が滑走路を走る。 一気に加速してトップスピードに乗り、そのまま暗闇の世界へ飛び込んだ。 「ま、まだ心の準備がぁ〜〜〜〜〜っ!!」 ひ、ひどいよ二人とも! 準備も何もあったもんじゃなかった。 遅れてエンジンを噴かしたけど、上も下も右も左も何もわからなくて怖くてスピードが出せない。 二人が繋いでくれた手だけが頼りだった。 紅茶にミルクを落としたみたいに乳白色のグレーが広がる。 辛うじて雲の中に入った事がわかった。 「て、手ぇ離しちゃダメだよ!!絶対離さないでね!?」 シャーリーさんにされたみたいにぎゅっと両手に力を込めて交互に二人を見る。 大丈夫かな、い、痛くないかな?うぅ…怖いよぅ…。 「もう少しだけ我慢して…雲の上に出るから…」 ごおおおおって空気の流れに混じって、インカムからサーニャちゃんの声が聞こえてきた。 はっとしてサーニャちゃんのほうを見ると、黒くて細長い尻尾がふわふわと左右に揺れていた。 ぼっ、っという音がして急に視界が開けた。 見上げるとまん丸なお月様と、きらきら輝く数え切れない星たち。 見下ろせば綿飴みたいにふわふわした雲の絨毯。 輸送機の中から見ていたはずなのに、初めて見たような感覚。 わたしが見たことない空がそこに広がっていた。 「わぁ…」 自然と言葉が洩れて思わず身を乗り出していた。 「手、離すぞ?」 「あ…」 すっ、と二人の掌の感覚が消える。 でも怖いという気持ちはいつの間にか消えていて、いつもの飛ぶ感覚が戻ってくる。 「すごいなぁ…」 雲の上の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。 真夏なのにひんやりしてて、でも寒くはなくて。 暗いんだけど、柔らかな月光がふんわりと包んでくれていて明るくて。 不思議な空だった。 「わたし一人じゃ絶対こんな所まで来られなかったよ!ありがとう!サーニャちゃん、エイラさん!」 「へへ…」 「…いいえ、任務だから…」 インカムから辛うじて聞こえたサーニャちゃんの声は、月の光とは反対に少し強張っている気がした。 重いドアを開くとむわっとした熱気が肌を叩いた。 「ぅわぷっ…あ、熱い!?」 な、なにこれ!これがサウナ!? 「…宮藤さん?」 「おーい、後ろつかえてんだから早く入れよー」 サーニャちゃんが心配そうに見つめてきてその後ろでエイラさんがにやにや笑ってる。 「だ、だってこれ熱すぎるよ!」 「夜の空だって一発で飛べたんだ、これくらいなんて事ないだ…ろっ!」 入口で二の足を踏んでたらエイラさんが背中をぐいぐい押してくる。 壁にかけてあった温度計を見てみると…は、はちじゅうど!? 扶桑の特に暑い日でも40℃くらいなのに!? 「だ、だめだよエイラさん!こんな所にいたら干からびちゃうよ!?」 「私が干からびたことがあるように見えるか?」 「で、でも…」 「だいじょーぶだって、すぐ水で戻してやるから安心して干からびるといーよ」 「わ、わたしは椎茸とか昆布じゃないよぉ〜」 今にも泣き出しそうな声になってるのが自分でもわかった。 「気分悪くなったら言えよ?」 「…大丈夫よ宮藤さん、ほら、私も平気…」 「サーニャちゃん…」 …そう言われてみると、熱気で肌を焼かれているのに不思議と気持ちいい。 全身汗だくになってるのに嫌なべたつきも感じなかった。 「体の中の悪いものが汗と一緒に出ちゃうんだ」 そう言いながら焼けた石に柄杓で水をかけるエイラさん。 じゅわっという大きな音とともに、かけた水が一瞬で蒸発して部屋の熱気に溶けていく。 その光景をぼんやり見つめていたら、急にお尻をぱしっと叩かれた。 「…ひゃう!?な、なになに!?」 間抜けな声を出して後ずさると、榊の束みたいな枝を持ったエイラさんがいた。 見るとサーニャちゃんも同じ物でばさばさと体を叩いている。 ぼぅっとして油断していたところへのひどい不意打ちだ…。 「白樺の葉っぱで体を叩くんだ。血行がよくなる」 「そ、そういうことは叩く前に言ってよ!」 「いやぁ悪い悪い、お前の反応がいちいち面白くってさー♪」 そう言って悪戯っ子みたいな笑顔を作るエイラさん。 うぅ…遊ばれてる…。 「うぅ〜…」 最初は熱さも気持ちよかったけどだんだん暑さを感じるようになってきた。 「…これじゃさっきとかわんないよぉ〜…」 「スオムスじゃ風呂よりサウナなんだぞ?」 ケロッとした顔のエイラさんが言う。…そりゃぁエイラさんは慣れてるだろうけどさ…。 ふとサーニャちゃんを見ると同じように涼しい顔をしてる。 (いつもエイラさんと二人で入ってるのかな…?) なんとなくまじまじ見つめてたら 「…サーニャちゃんって肌白いよねぇ…」 「…ぇ…?」 …つい口をついて思ってたことが出てしまった。…のぼせちゃったのかな…。 「…どこ見てんだお前」 「…いっつも黒い服着てるから、余計目立つよねぇ…」 「…ぅ…ぁぅ…」 …あ、サーニャちゃん困ってる。 可愛いなぁ…エイラさんが大事にするのもなんだかわかる気がするな…。 「!?サーニャをそんな目で見んな!!」 …あはは…エイラさん怒ってる…えへへ、冗談だってばー。わたしで遊んだお返しだよー。 「…?おいミヤフジ…大丈夫か…?」 …エイラさん、顔近いよ…昨日のこと…思い出して…なんだかどきどきしちゃう…。 「宮藤さん…?」 …あれ…なんだか…ふらふらしてきた…? 「…ッ!バカッ!!言えっつっただろ!!」 …えっと、何を言うんでしたっけ? 「…ふが?」 鼻が息苦しい。触ってみるとちり紙が詰め込んであった。 (…なにこれ) 起き上がろうとしたけど体に力が入らない。 仕方なく首だけ動かして周りを見てみるとどうやら脱衣所のソファで横になっていたらしい。 ぽす、と目の前に濡れタオルが落ちる。 「気が付いたかー?」 頭の上から声。 見上げるとソファにもたれていたらしいエイラさんが私の顔を覗き込んできた。 一瞬固まる。 「ひ、ひゃっ!?」 びっくりして反射的に体を起こしてしまう。 「あだっ!」 「うぐぉっ!?」 い、痛い…目の前に星が見える…。 どうやら慌てて体を起こしたから案の定エイラさんとおでこをぶつけてしまったみたいだ。 「ミヤフジてめー…痛てて…見えてたのに避けられなかった…」 「ご、ごごごごめんなさひ!」 慌てて謝ったら鼻に詰めてたちり紙が鼻息で飛んだ。 「あ…」 「…ぶっ」 エイラさんが吹き出す。 カーッと顔が熱くなる。多分、耳まで真っ赤。 「あはははは、はひっ、い、今の何だよ、あははははは!!」 「ひ、ひどいよ…何もそこまで笑わなくても…」 「あはは!ひー、ハラ痛い…くく」 笑い転げるエイラさんを恨めしく見てるしかない…。 やがて落ち着いたのか笑いすぎで浮かんだ涙を拭った。 「ふぅ、なんかもう大丈夫みたいだな?鼻血も止まったみたいだし」 「う…わたし鼻血なんて出したの…?」 「覚えてないのかー?…ってのぼせて気を失ったんだからま、当然か」 ん…サウナに入ってた、っていうのは覚えてるんだけど、まさか失神してたなんて…。 「優しいエイラさんに感謝しろよなー?あとサーニャもすごく心配してたぞ」 「あ、ありがとうエイラさん…そういえばサーニャちゃんは?」 部屋を見回したけどサーニャちゃんの姿は見えない。 「サーニャなら先に水浴びに行かせた。その濡れタオルはサーニャが置いてくれたんだぞ。あとで礼言っとけー」 「うん…わたし、どれくらい寝てたの?」 「んー、5分くらいかな。ほんのちょっとの間」 「え、えと、エイラさんが看ててくれたの?」 おずおずと聞いてみる。ちょっと照れくさい。 「まぁ、無理矢理連れてきた私にも引け目があるっつーか、その、放っとけるわけないだろ…」 「え…」 一瞬どきりとする。 「友達がぶっ倒れたんだから心配しない方がおかしいだろって言ってんの!何度も言わせんなよー」 「そ、そうだよね」 ちょっと残念。…残念? 「つーかお前なんか余所余所しいんじゃねー?」 「…そうかな」 「なんか私に遠慮しまくってる気がするんだよ」 「そ、そんなことない…と思う」 割と図星だったりしてまごまごしてしまう。 「お前私の事嫌いなんだろ?だからそん…」 「そ、そんなことないよ!好きだよ!」 思わず叫んだ。 言ってから気づいたような気がする。 エイラさんの事は嫌いなんかじゃない。好き。 でも、エイラさんがわたしに感じてる好きとは、違う好き。 「お、おう…それならいいんだ」 「う…」 「うえぇー!?なんでそこで泣くんだよ!?」 なんだかいろいろこみ上げてきて限界だった。 わたしは女の子のことを好きになってしまったんだ。 エイラさんの好きはわたしの望む好きにはきっとならない。 それがたまらなく悲しかった。 「な、なんでもないよ…うくっ…なんでもない…」 「なんでもないわけないだろー!?」 「すぐ…落ち着くと思うから…」 胸が苦しくてたまらなかった。 わたしの胸の内を打ち明けても、たぶん彼女に迷惑がかかってしまう。 今もこうして理由も言わずに泣きじゃくって、迷惑をかけている。 好きだから、迷惑なんかかけたくない。 わたしはどうすればいいんだろう? 「…ったく、しょうがねーなー…」 きし、とソファが鳴ってエイラさんが移動してきた。 ふわりと長い銀髪が揺れる。 「っ!?」 「よーしよし落ち着けー」 抱きしめられて、頭を撫でられていた。 心臓がありえない速さでばくばくと高鳴る。 「え?な、なに?」 「他人にぎゅっとされると安心するだろ?」 「で、でも…」 「嫌ならやめるけど。…これ結構…いやかなり恥ずかしーんだから」 「あう…嫌…じゃないです…」 わたしもすごく恥ずかしい。 でもそれ以上に安心したし、嬉しかった。 「…サーニャがさ、」 「え?」 エイラさんが口を開く。 「サーニャがここに来た時にさ、寂しそうにしてたんだ」 「…うん」 「誰とも話そうとしないわ嫌なことズケズケ言いまくるメガネはいるわで大変だったよ」 「…うん」 「…まぁあいつも目と鼻の先にある故郷がネウロイに制圧されて、精神的に参ってる時期だったんだろうけどさ」 「…うん」 「んでなんかキツイ事言われたんだろうな…。一人で泣いてる所を見ちゃったんだよ」 「…」 きっと今わたしにしてくれてる事をしてあげたんだ。 いつもぶっきらぼうだけど、困ってる人や泣いてる人がいたら放っとけない優しい人なんだ。エイラさんは。 ペリーヌさんにちょっかいを出すのも、きっと塞ぎこんでるペリーヌさんなんて見たくないから。 「…ん、あー…私らしくねーな、昔話なんて。落ち着いたかミヤフジ?」 「う、うん。でももうちょっとだけ…」 涙は止まったけど、恥ずかしくてエイラさんの顔を直視できないと思う。 それに、もう少しこうして… 「我侭言ってんじゃねー!おらおらおら!」 「あひゃひゃひゃひゃ!?」 急に脇の下をくすぐられる。 不意打ちすぎて予想外だった。 「はい落ち着いた!な!」 もうこの話はおしまい、とでも言いたげに歯を見せて笑うエイラさん。 「はぁはぁ…うぅ…雰囲気ぶち壊し…」 「ん?なんか言ったか?」 「なんでもないです…」 でも大声で笑ったからか、エイラさんの顔もちゃんと直視できる。 …ダメだ、まだちょっと恥ずかしいかも。 「さ…ってと。私たちも水浴びしに行くかー?」 エイラさんが大きく伸びをする。 「水浴び?」 「サーニャが待ってるだろうし早く行かなきゃな」 そうだった。お礼言わないと。 「…つーわけで邪魔なバスタオルは取っちまいなー!!」 「ええぇっ!!?」 「半裸で抱き合ったんだ、今更何恥ずかしがってんだ!…こう言うとなんかすげー恥ずかしいな…」 「わー!言わないでよ!」 う、嬉しかったけどシチュエーションがすごく恥ずかしい…。 顔真っ赤なんだろうな…わたし。 「…まぁいいか、脱げー!!」 「ちょ、ちょっと待っ…!!」 「待たねー!さっさと邪魔なもん取っちゃえ!」 「ま、まだ心の準備がぁ〜〜〜〜〜っ!!」 今日はわたしが生まれた日。 今日は好きな人ができた日。 今日という日を胸の中に仕舞っておこうと思う。 わたしはエイラさんが好き。 女の子同士だけどすごく好き。 好きだけど、今はまだ胸の中に仕舞っておこうと思う。 でも、いつか。 …そういえばエイラさんってサーニャちゃんの事、すごく大事にしてるけどもしかして…。 うぅ…頑張ろう…。