ゲルトとルッキーニを組み合わせた全く新しいなにか(その1?) ※※※ 「ねー! トゥルーデー☆」 「ん、なんだハルトマ……ン?」 廊下で呼び止められ、振り返った先にいた少女は 想像していた人物とは違っていた。 「…フランチェスカ・ルッキーニ少尉…?」 「えへへー☆」 私のことを「トゥルーデ」と呼ぶ人物は限られている(と思っていた)。 新しいフォーメーションや妹の容態のこと、今朝の宮藤の様子などを考えつつ歩いていた私は、 その声の調子でまずミーナではなく、ハルトマンだろうと判断したのだが 実際に私のことを呼んだのは我が隊最年少のロマーニャ空軍所属の少尉、フランチェスカ・ルッキーニだった。 「何か用か?」 正直、彼女が私個人に話かけることなど滅多にない。 どんな用事があるというのだろう? 「ん〜とね、呼んでみただけでしたー!」 「????」 なんだ? からかわれているのか? 「エーリカとか隊長が『トゥルーデ』って呼んでるから、マネしてみたんだ〜」 「あ…、ああそうか…」 用もないのに呼び止めるな。と、一瞬思いもしたが その屈託のない笑顔と、無垢な瞳を前にして、そんな気分は消え失せていった。 これで相手がハルトマンなら、なにかよからぬたくらみの最中なのでは、と勘ぐってしまうところだがな。 「ねね!これからはアタシも『トゥルーデ』って呼んでもいい?」 以外な提案。 「ああ、まあ、かまわないぞ」 別に呼び方なんてなんでもいいと思うし、 私の名前は、そのままでは呼びにくいと思う人間もいるだろう。 ……今度は私も宮藤のことを名前で呼んでみようか……。 「やた!あっりがとー トゥルーデ☆」 と、言った瞬間、彼女は私に抱きついていた。 ふわりと、太陽の香りがしたような気がした。 「わ、わわ!」 「いしし〜☆ ふにふに〜♪」 彼女が私の胸に顔を埋めて笑っている。 ここまで私にアクティブにスキンシップをしてきたのはクリスとハルトマンくらいのものだな。 しかし、クリスよりも積極的で、ハルトマンよりもストレートな彼女な様子に なにか新鮮なものを感じている私がいる。 見た目も少しクリスに似て……はないな。さすがに。 元気で明るいところはクリスや宮藤に似てると言えなくもないが。 最年少の天才少女……戦争という異常な状況下でも、こうして無邪気に笑えることが 彼女の心の強さを表しているようでもある。 「……私にはない強さかもしれないな……」 「うにょ?なぁに?」 子猫のような瞳が下から真っ直ぐに見つめてくる。 「いや、なんでもないさ」 胸元にある頭をそっと撫でてみる。 柔らかい髪。まるで子猫を撫でているような感覚だ。 つい、いつまでも撫でていたくなる。 「あ……えへへへ〜♪」 笑顔がふにゃ、っと崩れた。なんともだらしなく、愛らしい笑顔。 「トゥルーデってもっと恐い人だと思っちゃってた」 「だろうな」 実際、つねに他人には厳しく接しているつもりだ。もちろん自分にも、だ。 ビショップ軍曹あたりには苦手に思われているんじゃないか? 「じゃあ、アタシがみんなに言ってきてあげる!トゥルーデはホントは優しいんだよ〜って!」 「あ、いや、それは」 なんだか恥ずかしい。 一応、ミーナや坂本少佐に次いで、この部隊を引っ張っていく立場にあるハズであるから そういうのはなんかこうイメージ的に……… 大体、優しいってのはいくらなんでも言い過ぎだろう。 「それはやめておいてくれ」 「え〜?なんで〜?」 なんと言ったものかな…? 「なんでって……えーと、その…ホ、ホラ!私はクールでカッコイイ人間だと思われたいんだ!」 「くーる?」 「そう!クール! So cool!! あ、これも皆に言っては駄目だぞ」 「うじゅー…… そっか。うん!わかった!」 そうかわかってくれたか。自分では言ってて訳がわからないとこまで来ているが。 「シャーリーも言ってた!『いい女はセクシー&クールでルッパァ〜ン』だって!」 なに教えてるんだリベリアン。ルパンって誰だ。ガリア人か? 「トゥルーデはセクシーだから、あともうちょっとなんだね!いいなぁ〜」 「………え?」 予想だにしない言葉が耳に入ってきた。 セクシー?私が?え?なんだって? 「じゃ、また後でね〜☆」 「あ……待っ…」 パタパタと飛び跳ねるような足取りで、ルッキーニ少尉は去っていってしまった。 ………セクシーなのか、私は……?  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・ 午後の訓練が終了。 訓練の間も、終わった今でも、ルッキーニ少尉の言葉がグルグルと意識を巡っていた。 ニュアンス的なものは理解できる。 つまり彼女は、私が女性的魅力のある人間だと言ったわけだ。 正直、自分が他人からそういうふうに見られることなんてないと思っていた。 祖国奪還のため、あの憎むべき敵達との戦いのために、幼いころから戦場に身を置いてきた私は、 女としての自分なんて今更考えることなどなかったはずだ。 「………ん」 そっと、自分の胸を触ってみた。 自分で思うのもなんだが、柔らかい。 「前は、これが嫌だったんだよな…」 数年前の私は、まるで女性の体の象徴のような、自分の二つの膨らみが嫌いだった。 こんなもの戦いには関係ない。 一応、今でもそうは思っている。 いつからかあまり気にならなくはなったが、膨らみ初めのときは やり場のない悔しさがこみ上げたものだったな。 丸みをおびてくる自分の体が、まるで戦場にでることを拒んでいるようで。 「う〜む」 しかし別に、他人の目を引くほど大きいわけでもない(多分)。 どのあたりでルッキーニ少尉は、私にセクシーを見出したのだろう。 胸ではないのか? そもそも、なぜ急に彼女は私に接してきたんだ? 「……なにしているのかしら?トゥルーデ……?」 5mほど前に、我が部隊の隊長である、ミーナが立ち尽くしていた。 なにか奇怪なものを見た、という様子で。 廊下の真ん中で、難しい顔して自らの胸を揉む私。ゲルトルート・バルクホルン。 マズイ。確かに不気味かもしれない。 なにか言わなければ。 カールスラント軍人はうろたえない。 「えー…その、なんだ。そう、最近下着がキツくなってきた気がしてな」 「あ、ああ。そういうことね。ビックリしてしまったわ」 安心したような様子のミーナ。 胸元に手を当て、安堵の表情を受かべている。 ふむ……、こういう一つ一つの仕草を見ると、ミーナは実に女性的な感じがする。 思わず上から下までジックリと眺めてしまった。 胸も私より大きい。 イェーガー大尉ほどではないが、むしろこれくらいのほうが丁度いいんじゃないか? 正直、あのリベリアンのは無駄にでか過ぎるだろう。 「トゥルーデ?どうかした?」 「ん?ああ、ミーナはセクシーだな」 「………は?」 今なにを言った私。 イカン。ミーナの顔がまた引きつってきている。 「あー!そうだ! たまには支給されるものじゃなくて、自分で下着を買おうと思ってな」 「………」 「でも自分ではよくわからなくて、誰か参考にしようかと」 「………」 「そしたら目の前にセクシーなミーナが現れたじゃないか」 「………」 「一体、どんなセクシーな下着を身に着けているのか……な…と」 「………」 最後のは完全に墓穴だった。 もうなにを言っても駄目な気がする。 「トゥルーデ……休暇を取ったらどうかしら」 「いや……スマン。ホントに……」 「…今日はもうゆっくり休むことね…」 眉間に指を当てながらミーナが通り過ぎていった。 どうかしてしまっているな今日の私は……。 風呂にでもいくか……  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・ チャプ 湯船に浸かり、体を休める。 「ふう……」 色々と考えこんでいたことも、湯と一緒に流れ落ちていくようだ。 やはり、らしくなく考えすぎたな……。 一晩寝れば、明日はいつも通りの私がいることだろう。 カールスラント軍人たるもの、体調だけでなくメンタル面でも万全でいなくてはいけないな。 「やっぱりリーネちゃんはスゴイね〜」 「や、やだぁ どこ触ってるの芳佳ちゃ〜ん」 シャワーのところで、宮藤とビショップ軍曹がじゃれている。 宮藤が後ろから抱き付いてちょっかいをだしている形だ。 ああ……悪戯っ子な宮藤も可愛いな……。 対照的なシルエットをした二人の体が揺れている。 宮藤の未成熟な体は実に可愛い。 特にあの尻は見事だと思う。 東洋の神秘だな。うんうん。 ビショップ軍曹の体はセクシーというか、なにか危険な感じだな。 体格やこれからのことを考えると、ひょっとしてイェーガー大尉よりすごいんじゃないのか? ああ、ハルトマンがなにか言っていたっけ。 ある意味エース級とかなんとか。 そんなことを考えながらぼんやりと眺めていると、ビショップ軍曹と目が合った。 「あの……なんでしょう?」 おずおずと声をかけてくる。 やはり恐がられてしまっているみたいだな。 「あ、もしかしてうるさかったですか!? ごめんなさい! もう私達でますから!」 「いや、別にそういうわけじゃ…」 とりあえず誤解だと言っておこうと思ったが、急に宮藤が大声で叫びだした。 「バルクホルンさん! 駄目ですよ! リーネちゃんのは駄目です! 渡しませんよ!」 なにか見当違いなことを言っているな宮藤。ハハハこやつめ。 「え?え?」 混乱するビショップ軍曹。 「あ……でもバルクホルンさんのも、なかなか…」 急に宮藤の目がトロンとして、頬が紅潮してきた。 手がワキワキと、怪しげな動きをしている。 私の胸を見ているようだが……。 「だ、駄目ー!芳佳ちゃん!! 私が!私がいるから!」 「えへへー…おっぱい…」 そのままビショップ軍曹が宮藤を引っ張っていく形で、二人は脱衣所へと戻って行った。 なんだろう。 二人ともなにか誤解したままなような気がする。 しかもかなり失礼な。 「やはり胸か?胸なのか?」 宮藤が私の胸のこと(なんだと思う)をなにやら言っていたな。 …せっかく気にしなくなったところだったのに…また考えこんでしまいそうだ。 二人が去ったことで、浴場には私一人となった。 「はぁ……」 溜め息のひとつもでてくる。 「…………」 着衣時とは違い、露になっている自らの胸に、そっと手を這わせてみる。 「ん……ぁ………んん」 直に触れてみると、そこは思っていたより敏感な部位だった。 「こ…んな柔らかさも…んん ……感覚…も…なんで…」 必要ない。 そう思っていた。 でも、今はこんなにも気になってしまっている。 ガタガタッ 「!!」 急に我に返る。 なにをやっているんだ……私は。 脱衣所のほうから物音がした。 どうやら誰か入ってくるようだ。 落ち着くんだ私。 カールスラント軍人はうろたえないんだってば。 トタタタタ… 「キャッホー☆」 ザ ブ ー ン 「うわ……!」 走ってきたその少女は勢い良く湯船へと飛び込んできた。 おかげで盛大に飛沫を頭から浴びてしまう。 こんなことをするのは…… 「んにゃ? トゥルーデ?」 やはりルッキーニ少尉か。 正直、今はあまり会いたくはないところだが、冷静に注意をしておく。 「もう少し風呂は静かに入るんだぞ」 「ありり〜… ごめーん!誰もいないと思ったんだー」 風呂と私の意識に同時に飛び込んできたロマーニャ人の少女。 てへへと、白い歯をのぞかせて笑う。 少し褐色じみた肌の色は、色白な面々が多い501の中では目立つ存在だ。 裸になってみると、改めてそう思う。 「んにゅ? なにみてんの?」 「あ、スマン。なんでもない…」 ついその裸身を見つめてしまった。慌てて顔を伏せる。 「なになに〜? あちしの体に興味があんの〜?」 フフンと悪戯っぽい笑みを浮かべ、私の顔を覗きこんできくる。 「な、なにを言っているんだ! 子供の癖して……」 「む! なんだと〜…… うりゃ!」 また急に抱きついてくる。 「わ!こら! よさないか!」 「えっへへ〜♪ トゥルーデ〜♪」 「駄目だ!よすんだ!」 今は朝方の時と違って、お互い裸なわけで。 さっきまで…その…自身で胸を触っていて、敏感になっているわけで。 このままではよくわからないが、いろいろ大変なことになってしまう気がするわけで。 「そ〜れ、タッチ!」 「ぅっひゃぁっ!!」 スゴイ声がでてしまった。 ついには直に胸を触ってくるルッキーニ少尉。 「や、やめ……」 「うりうり〜♪」 何度となく隊員達の胸を揉んできたであろうルッキーニ少尉の技術は、見事なものであった。 大胆であり繊細。 自由に形を変える胸を見事に手の中へ収め、的確に揉みしだいていく。 だんだんと危険な感情が芽生えてきて……ってイカンイカンイカン。 「や…めないか!!」 強引に腕力で引き離す。 所詮は12歳の少女。 力いっぱい押さえ込めばどうということはない。 「ちぇ〜 もっと触りたかったのに……」 不満気に頬をぷぅ、と膨らます。 少し可愛いと思ってしまったが、今は他に言うことがある。 「…あまり私に構わないほうがいい…」 「あり?………迷惑だった…?」 太陽に雲がかかるように、その笑顔が曇った。 湯船の中で膝を抱えるように座り込み、上目づかいで私を見つめてくる。 「ゴメンね……トゥルーデ…」 「いや、そうじゃないんだが……」 違う。お前にそんな顔をさせたかったわけじゃない。 「私なんかより、イェーガー大尉や宮藤達と一緒に遊んだほうが、きっとお前も楽しいだろう。」 戦いくらいしかできない私を構ったって、退屈なだけなんだ。 だから。 「そんなことないよ!」 ザブッと勢いよく立ち上がり、強い瞳で私を見据えるルッキーニ少尉。 「トゥルーデは戦ってる時は1人でも強いけど、その、みんなのことも守ってくれて、えと  いつも恐そうな顔してて、だけどなんだか寂しそうで、でも、この間から少しずつ笑うようになって、  それで、その、みんなといっしょに、アタシともいっしょに笑っててほしくて……」 堰を切ったように話し出す。 「この間」というのは、私が被弾して宮藤に治療を受けた戦闘のときのことか…。 ………確かにあの時から、私の心には少しずつ余裕がでてきた。 久しぶりに、まだ眠ったままだが妹の顔も見にいくことができた。 「それにその…元気だして欲しくて」 元気? 「トゥルーデ、今日の訓練のとき、なんだか集中できてないように見えて…だから…」 人差し指を咥え、もごもごと喋るルッキーニ少尉。 「それは……」 お前が言ったことのせいだ。と、一瞬思いはしたが、 勝手に深く考え込んでしまったのは、やはり私自身であるため言葉を飲み込む。 訓練の時、私はいつも通りやれていたはず。 しかし本当は集中できていない自分を、この齢12歳の少女に見破られていたなんて。 驚いた。 宮藤が部隊にやってくるずっと前から、お前は私を見てくれていたんだな。 そして今日も。 他のウィッチをまとめる立場にある私が、最も若く、最も小さい少女に こんなにも気にかけてもらっていたなんて。 まるで立場が逆じゃないか。 しっかりしろ、ゲルトルート・バルクホルン大尉。 「うぅ〜………」 うまく喋ることができなかったのが不満なのか、 再び座り込み、ションボリとうなだれるルッキーニ少尉。 すっかり意気消沈してしまったようだ。 邪険にしてしまって、なんだか悪いことをしてしまったようだな…… ……… …… … よし。 「フランチェスカ・ルッキーニ少尉!」 「ふぇっ!?」 ビクッと反射的に起立する少尉。 「後ろを向くんだ」 「う、うん…」 力強い私の言葉に、黙って従う彼女。 「……そのまま私の膝の上に座れ」 「え??」 頭に?を浮かべたまま、ゆっくりと私に体を寄せてくる。 そしてそのまま、彼女の小柄な体を後ろから抱き寄せた。 「あれ?え?あれ?」 風呂の中だからか、小柄な体は見た目以上に軽く感じた。 本当に。 本当にまだ幼い少女なんだな……。 その幼い体を優しく抱きしめて囁く。 「特別だぞ………」       チュッ 耳元にそっと、キスをする。 そして、私のことをずっと想ってくれていた、小さな仲間に贈る言葉。      「ありがとう」  ・  ・  ・  ・  ・ ちなみに、私がセクシー云々というのは 「トゥルーデはねぇ〜、このセクシー魔法少女エーリカちゃんのもとで日々セクシーを学んでいるのだ!  だから胸は色よし張りよし! お尻もあんなにエロエロなんだよ〜〜。  私の次に!」 というハルトマン野郎の入れ知恵らしい。 あとで部屋を外側から封鎖してやることにしよう。 ※※※ ここまで読んでくれた人にも「ありがとう」。 次回があるかは謎です。 SSって実際やってみるとスゴイ大変ダナ! キモい人マジすごい