ようせいといっしょ ある冬の日のこと。 バイクのガレージでうずくまる何かを見つけた。 それは手のひらに乗るくらいの大きさで頭からはウサギのような耳が生えていた。 うさうさようせい。 噂は聞いたことがあった。でも実際に見るのは初めてだ。 ゆっくりと近づくとうさうさようせいがキッとこちらを睨む。 だが睨むだけで動こうとしない。 不思議に思い更に近づいた。するとうさうさようせいは怪我をしているではないか。 手当てをしてあげないと・・・そう思ってうさうさようせいに手を伸ばした。 「大丈夫、怖くないぞ」 手が触れたときがぶりと親指を噛まれた。手加減無しで噛んだのか、血も少し出ているしかなり痛い。 痛みに耐えつつうさうさようせいをそっと抱きかかえ俺は家の中へと戻った。 適当な籠にタオルをひいて簡易ベッドを作りうさうさようせいをそこへと置いた。 こちらが手を離そうとしたのを察したのかようやく親指を離してくれた。 だが未だ警戒は解いていないらしい。 救急箱を引っ張り出し中から薬やらなんやらを取り出す。 人間用の薬で大丈夫かな?まぁハンバーガー食べるって噂だし大丈夫だろう。 「ちょっとしみるかもしれないけど我慢してくれよな」 消毒液で湿らせた脱脂綿を近づけるとまた噛み付こうとしてきた。 う〜ん・・・どうしたものか。 あまり無理矢理なことはしたくなかったけど・・・。 脱脂綿を持つ右手をちらつかせ注意を引き・・・今! 左手でうさうさようせいを後ろからロック! 「こら、暴れるなって。すぐ終わらせるから」 手早く手当てを終わらせて、簡易ベッドに戻してあげるがうさうさようせいは涙目で睨みあげたままじっと俺を見ている。 しかも少し唸ってる・・・どうやらかなり沁みたらしい。 もしかしたらいじめたと思ってるかも。 そんなうさうさようせいの刺さるような視線を感じつつも今度は自分の右手親指の手当てをした。 するとうさうさようせいの様子が変わった。 しきりに俺の指と自分の身体を見比べている。 何かに気付いたのか、さっきの刺さるような視線と打って変わって申し訳なさそうな目で見てくるではないか。 なんかこっちが悪いことしたみたいだ。 「ふぁ〜あ」 眠い。時計を見ると既に日付が変わっている。寝るか。 「今日はもう遅いからうちで休んでいきな。なんなら傷が治るまで居てもいいぞ?」 また噛まれるかな?と思いつつも、うさうさようせいの頭に手を伸ばす。 噛まれなかった。頭を撫でてやりながら「おやすみ」と告げて自分の部屋へと戻る。 こうして俺とうさうさようせいの奇妙な共同生活が始まった。