ようせいといっしょ 4 うさうさようせいが家に来てからだいぶ経つ。 怪我もすっかり良くなり今では家の中をうろちょろしている。 そこで気になることが一つあるわけだ。 こいつ巣に戻らなくていいの? 調べたところによるとうさうさようせいは冬になると巣に食料を溜め込み冬篭りをするらしい。 今の時季は初冬。本格的な冬はもう少し先だ。早く戻って冬篭りの準備をした方が良いのでは? それにうさうさようせいはしましまようせいと共生するパターンが多いらしい。 相方のいないうさうさようせいなのだろうか? そんな疑問を抱えたとある朝。 「・・・・・・芋くせぇ」 ジャガイモの匂いで起きることになるなんて思いもしなかった。 リビングに行くとテーブルの上に塩茹でしたジャガイモが置いてあった。 しかもご丁寧に二つの皿に盛り分けられている。 「お前が作ったのか?」 その問いにえっへんと胸を張って答えるうさうさようせい。 ほぉ・・・なかなか気が利くじゃないかと思おうとして気がついた。 うん、君の皿の方が大きいばかりで量が多いねー、対して俺のは随分と小さいのが揃ってますねーしかも量が少ないねー。 俺は無言で皿を入れ替えた。 何をするんだ!と抗議してくるうさうさようせい。 「この家の家主は俺だぞ!」 それでも尚抗議するうさうさようせい。おそらく、でも作ったのは私だ!と思っているに違いない。 「はいはい、わかったわかった」 両方の皿の芋を分けなおす。 うさうさようせいの方には大きい芋を少し多めに入れてやるが・・・。 「これでいいだろ?」 不満たっぷりといった表情だ。 「・・・いい子にしたら今日の昼はハンバーガー」 その一言で一瞬で表情が戻った。 相変わらずだなぁ。 昼ごはんに約束通りハンバーガーを食べていたとき俺は遂に疑問を口にした。 「なぁお前、巣に帰らなくていいの?」 あ、ポテト落とした。 「冬篭りの準備しないといけないらしいじゃないか。それとも良い餌場でも確保してあるのか?」 今度はギクリと跳ねる肩と泳ぐ視線。 ゆっくりとうさうさようせいがジェスチャーを始めた。 ジェスチャーも終わり「と言うことがありまして」的な顔のうさうさようせい。 んが、しかし・・・ 「ゴメン、複雑すぎてよくわかんなかったからもう一回わかりやすくお願い」 ビシッ! ポテトが飛んできて額に当たる。 「コラ!食べ物を投げるな!」 うるさいと言わんばかりに怒っている。 それから紙とペンをよこせ的な動作を始めたので使ってないルーズリーフと鉛筆と消しゴムを渡した。 するとこちらに背を向け何か書き始めたではないか。 10分後、書き終えたのか満足そうな顔で振り返るうさうさようせい。 どうやら絵を描いていたらしく出来上がった絵を使い紙芝居を始めた。 内容はおそらくこうだ。 さむいふゆがもうすぐやってきます。 ふゆにそなえてたべものをあつめないと。 でもあめがふるひがおおいかったせいでだいじなすあなはびしょびしょ。 たべられそうなきのみもほとんどみつからない。 ほかのようせいたちのすにとめてもらおうか、それともあたらしいすをつくりなおそうか・・・なやみました。 そこでひらめたのです。 まちへいこう!まちへいけばきっとたべものもてにはるしすあなのかわりになるものもみつかるかもしれない! ハンバーガー。 たぶんこれであっている・・・・・・はず。 だって絵が微妙に下手なんだもん。 「なんとなく事情はわかった・・・と思う。それでこれからどうするつもりなんだ?」 おずおずと最後の1枚を差し出すうさうさようせい。 さっきまでの態度が嘘みたいに謙虚だ。 これは・・・家にバイクっぽい何か・・・。 もしかして俺の家か? 家の中には人らしきものとが一人とうさうさようせいらしい何かが一つ。 「・・・・・・冬の間居させてくれってことか?」 コクリと頷いた後、ペコリと頭を下げるうさうさようせい。 「・・・・・・・・・わかったよ、好きにしな」 ま、これで追い出してまた怪我でもされたら寝覚めが悪いしな。 うるうるとした目で見つめてくるうさうさようせいの頭を撫でてやる。 「でもハンバーガーは1週間に1回な」 キッと目つきが変わり抗議するうさうさようせい。 ・・・その後、激論の末ハンバーガーは4日に1回ということに決まった。 こうして俺とうさうさようせいの長くて短い冬が新しい始まりを告げた。