よ×エSSのはずが何か違うものになっていた エーリカ視点 「うわぁ…風が気持ち良いね…」 「だろー?前に訓練中に上を飛んだときに見つけて以来、お気に入りの場所なんだよ」 お…ホントに聞こえた。 なんでもやってみるもんだねー、うんうん。 サーニャが真剣な顔してあたしたちに親指をぐっと立てて見せた。 思わずみんなで返してしまう。ナイスサーニャ。 いやー…あのサーニャが引き受けてくれるとは思わなかったよ。 っと、今は会話に集中しないと。 「ここさ…まだ誰も連れてきたことないんだ」 「え…?」 「ミヤフジが私のとっておきの場所の、初めてのお客さん」 「…えへへ、な、なんだか照れちゃうな…」 おー、おー、なーんかいい雰囲気になってきたじゃん。熱っつぅーい。 「あ…エイラさん…?」 「ごめん…なんつーかその、我慢できなくてサ…」 「え…そ、そんなのだめだよぅ…」 「いいじゃんか…誰も見てないから…」 …っておいおいおい!?ナニおっぱじめようとしてますかアナタたち!? 昼間ですよ!?野外ですよ!?ていうか見えないけどあたしたちが絶賛生放送受信中ですって!! いや面白いからこちらとしては全然おっけーですけどー! 全員が息を飲んで次の台詞を待つ。 「…んっ…じゅる…っぷは」 「あうぅ…真っ赤だよぅ…」 「ほら…ミヤフジも早く…」 「だめだめだめ…あっ…んっ…!」 うおおおおおおおお!?こ、これはもしやぁー!? 会場が色めき立った。 「ん…わ…甘ぁーい!」 「だろー?絶品だろーここのトマト」 っだあああああああああああああああああああああ!!!!! その場にいる全員がコントのようにズッコケた。 サーニャも律儀に右肩をがくんっと落としたもんだから、電波が乱れたのかインカムからざざざっと耳障りなノイズが入る。 「でも…いいのかなぁ…勝手に成ってるのを食べちゃっても」 「いいのいいの、ここの畑ってこの近くの隠居じいさんの趣味でさ、前にいい畑だ、って褒めたらいつでも来て食っていいぞって言ってくれたんだよ」 「へぇー、優しいお爺さんだね」 「でも勿体無いよなー。こんなに甘くて美味いのに…はむっ」 …もうつっこむ気力もねーっす。 「きょ、今日のところは解散としますかぁ…」 「あ、あぁ…そうだな…なんかどっと疲れたよ…はは」 「にゃはははは!でも盗み聞きってたーのしー♪」 「まったく悪趣味ですわ!」 「で、でもすごくドキドキしちゃったよ〜」 「…残念…」 別に何事も無かったようでみんな安心したような残念なような複雑な面持ちでぞろぞろあたしの部屋から出て行く。 …ってなんか一人足りないような…。 「…………………」 「あ」 トゥルーデが正座したまんま真っ赤になって固まっていた。 なんとかトゥルーデを再起動させてならし運転のごとくぶらぶら一緒に基地を散歩する。 幸いな事にネウロイ予報も特に出ていない土曜日の午後。 みんな休日を満喫していた。 「ほーんとトゥルーデってば宮藤の事になると周りが見えなくなるよね〜」 「うっうっ…だって…まさかクリ…宮藤があんな…ひっく…でもクリ…エイラもいい子だから…うっ…お姉…私は暖かく見守るよ…うっうっ…」 「あーはいはい…ほんっと姉バカだねぇー」 トゥルーデがこわれた。 宮藤に命を助けられたあたりから、トゥルーデは日に日におかしくなっていってる気がする。 もうあの凛々しいトゥルーデは見られないんだろうか…。 …いや面白いなら別に構いませんけどね? 「エーリカぁ…なんで、なんで宮藤は同性愛なんて茨の道を進もうなんて思っちゃったんだよぅ…私は認めんぞぉ、そんな非生産的な…」 「あんたが言うなって。じゃあ宮藤がどっかの男とイチャイチャしてれば文句無いっての?」 「いやそれはそれで腹が立つから相手の男を撃つよ」 真顔で物騒な事言うんじゃないよお姉ちゃん。 「…もうどうすりゃいいってのさ」 ダメだ…錯乱して何を言ってるのかさっぱり理解できない…。 「う…エーリカのばかぁっ!!いいもんクリスの寝顔見て癒されてくるもんっ!!」 「ってトゥルーデ!?車運転できないじゃん!!」 「ミーナにストライカーユニットの使用許可を申請してくるもん!!」 『もん』じゃねーっしょ『もん』じゃ…。 (ああ…もう本当にあたしの知ってるトゥルーデじゃないんだ…。) そんな事を考えながら遠くを見る。 ああ、今日もブリタニアは平和だなぁ。 「…ん?」 窓の外の庭園を、のっぽの白髪とちっこい豆柴が仲良さそうに歩いていた。 いつの間にかデートからご帰還なさっていたようで、手なんか繋いでそれはもう楽しそうにお喋りしている。 あんな目立つところでまぁ堂々と…しかも当人たちはあれでバレてないと思っているんだから驚きだよ。ホント。 恋は盲目って感じかな。間違ってる気がするけど。 「…エイラも芳佳ちゃんも幸せそう…」 「うわっ!?…サーニャいつからそこに!?」 「…ちょっと前…」 サーニャがいつの間にかあたしの隣に立って例のバカップルを見ていた。 いやマジで気配を感じなかったんだけど。 うーん、ペリーヌの『幽霊』って表現もなかなか的を得ているな、とか思う。 「お話し…聞く?」 サーニャがアンテナを発現させて聞いてきた。 「いや〜、みんなもいないしあたし達だけ聞くってのもあれだからさ」 あの引っ込み思案だったサーニャがずいぶんと乗り気だ。 もしかしたらさっきも、あたし達に頼まれたからじゃなくて単に自分も聞きたかっただけなのかもしれない。 「…そうですか」 心なしか残念そうにスタンバイを解くサーニャ。 いや、一応それ盗聴だから。犯罪スレスレってかむしろアウトだから。 …やっぱ自分が聞きたいだけだよこの子。お年頃って奴なのかねぇ。 考えながら眼下を歩いていく二人に視線を戻す。 「そういえばさ、サーニャは寂しいとか思わないわけ?」 ふと浮かんだ疑問を口にする。 「…何が?」 「いやさ、ほんのちょっと前まではエイラはあんたにベッタベタだったわけじゃん。それが急に宮藤とラブラブになっちゃって寂しかったりしない?」 人差し指を頬に当ててちょっと考え込むポーズ。 たっぷり数秒黙り込んでようやく口を開いた。 「…寂しい…とはちょっと違うかな…」 「どゆこと?」 「…確かにいつでも相手してくれなくなったのは…寂しいけど…」 「けど?」 「…エイラはお姉ちゃんみたいな存在だから…優しくしてくれるのは嬉しいけど、いつまでも甘えてちゃダメだと思うから…」 へぇ…。 「それに…いつまでも妹離れができないお姉ちゃんを持つと恥ずかしいし」 「ぶっ!」 思わず吹き出した。 たぶんサーニャとしては珍しく冗談を言ったつもりだったんだろう。 タイムリーでピンポイントすぎて卑怯だよサーニャ。 「…そんなにおかしかった??」 「くく…いや、こっちの話…ぷぷ…」 「…?」 いやいやほんと恥ずかしいよねそんな姉。 どっかの誰かに聞かせてあげたい台詞だよ。 「…ふぅ、サーニャって歳の割に大人だよね」 ようやく落ち着いて思った事を素直に言う。 「…そ、そうかな…」 「そうだよ」 少なくともエイラよりずっと大人な思考の持ち主だと思った。 まぁ子供っぽい事全てが悪いとは言わないけどさ。 そこがエイラの魅力だと思うし、たぶん宮藤もそんな性格のエイラだからこそ惹かれたんだと思う。 「…エイラ達、行っちゃったね」 「ん?あらら、ホントだ」 珍しくサーニャがお喋りなもんだから思わず話し込んでしまって二人を見失う。 まぁいいや。明日も休日なんだから何かしらイベントが起こるに違いない。 エーリカちゃんは焦ったりしないのだよ。 「…ふぁ…」 サーニャが大きなあくびを漏らした。 …そういえば昨夜も哨戒に出ていた気がする…悪い事しちゃったかも。 必要な仕事とはいえミーナも人使いが荒いよなぁ…。 「あぁ、ごめんねサーニャ。寝てないのに頼みごとなんかしちゃってさ」 「ん…いいの。…みんなでわいわいやるの…楽しかったし…」 「そっか。ありがとねサーニャ。おやすみ」 「…おやすみなさい…」 ふらふらと危なっかしい足取りで自室に戻っていくサーニャを見送った。 いやホント出来た子だわ。 あんなんが妹なら姉バカにもなるってもんだよなぁ、エイラ。 「…っく、…ひっく…エーリカぁ…」 背後からすすり泣く声が聞こえた。 怪奇、白昼の基地に響く泣き声!ガリア攻略最前線に不気味な女の幽霊を見た!…とか面白そう。 …そうでもないか。 「なーに泣いてんのさトゥルーデ」 振り返って泣き声の主に白い視線を送る。 「…ミーナが、ひっく…ストライカー使っちゃダメって…うう…」 「よしよしそんなこったろーと思ったよ。あたしが運転してあげるからジープの使用許可とってお見舞い行こうねー」 「…ひっく、うん…」 あたしより10センチ近く高い位置にある頭を撫でながら慰める。 こっちの姉バカもほんと世話がかかる子だわ…。 さっきから姉だの妹だのそんな話をしてたからふとあの子の事を思い出した。 …たまには手紙でも書いてやろうかな。 日曜、昼前、昨日に続き快晴。 「…あぢー…」 「…言わないでってば…。余計暑くなるじゃん…」 晴れが続いたせいか朝から気温はうなぎ上りだった。 傍らのドテカボチャが5分に一回のペースで暑いと文句を垂れながら監視を続けている。 「…ほーんとこの炎天下の中でお熱いねぇ…あいつら…」 基地の片隅の海がよく見える木陰で寄り添う二人。言うまでもなくエイラと宮藤だ。 それに対して屋上から双眼鏡で覗き見する出歯亀二人。 「お…宮藤からでこちゅー確認」 「ホイ本日7回目」 ちなみに内訳は宮藤5回エイラ2回。ヘタレイラめ。 「…あー…休日の昼間っから何やってんのかねぇあたしら…」 「嫌ならルッキーニみたいに帰ればいいと思うよー…てかあたしもそろそろ帰りたい気分」 出歯亀開始時には確かにルッキーニもいた。 開始3分もしないうちに「つまんなーい!」とか言い出してさっさと帰っちゃったけどね。 …ある意味英断かもしれなかった。 はじめのうちはでこちゅーだけでシャーリーと二人で「うおおおおおお!」とか興奮してたけど、この二人、マジでそれ以上のネタが無い。 「あいつらおでこにキスするかイチャイチャ抱きあうくらいしかしないもんなー…てかなんででこちゅー」 「あーそれあたしが吹き込んだウソだからー。口同士でキスすると女同士でも魔力逃げるよとかほっぺもギリアウトとか」 「うえー?またなんでそんなウソを」 「その方がいつ欲求不満が爆発して立場を忘れて欲に溺れるか楽しみじゃん」 「うわ外道」 「楽しんでる癖に」 「まぁそうだけどさ」 覇気の無い会話。実にゆるい。 「口同士はともかくほっぺもNGとかちょっと考えればわかりそうなもんなのになぁ…そんなんだったらリベリオンはウィッチなんて絶滅してるっての」 「恋は盲目ってやつだねー」 「…使い方間違ってるぞ…いや合ってるのか?」 「なんかもうそれっぽければどーでもいーやー…」 いよいよやる気も無くなってきた。 さすがに昼間っからこれ以上の進展も無さそうなので、この場はもう潮時かもしれない。 「宮藤からでこちゅー確認…と、大尉殿ーそろそろ戦略的撤退を進言する所存でありますー」 「そうだなー…日も高くなってきたし腹も減ってきたしそろそろ引き上げるかー」 そんな感じで壮大な時間の無駄遣いに終わりを告げるのであった。まる。 「おはよう…ハルトマンさん…イェーガーさん…」 食堂に向かう途中で寝起きらしいサーニャにばったり遭遇した。 「おはよっ。なんか今日は早いね」 「おはようサーニャ。あたしら今から昼メシだけど一緒に来るかー?」 各々挨拶を交わす。 「…ご一緒します…眠い…けど…」 「大丈夫かー」 「おぶってやろうか?」 どうでもいいけどなかなか珍しいメンツだと思った。 サーニャも随分あたし達に溶け込んでくれたのかなとか思う。 「あっ、サーニャ!」 背後から特徴的な声が響く。 「ね、寝てなくて大丈夫か?睡眠不足は体に毒だぞ?」 お姉ちゃん2号が走り寄ってくる。 見回したけど宮藤の姿は無かった。まぁ四六時中一緒ってわけでもないだろうしね。 「平気だよエイラ…ふぁ…」 「な、ならいいんだケド…まだあくびしてるじゃないか」 「まぁ本人が大丈夫だってんだから平気じゃないか?」 「う、うん…」 お昼ごはんに起きてきただけでここまで慌てるエイラ。 うーん確かににこれは過保護過ぎかもねぇ。 「じゃじゃーん!!これぞ我がカールスラント脅威の最新技術!磁気テープレコーダーだ!」 夜、再びあたしの部屋。 今夜はサーニャの哨戒も休みと聞いたから、ひとつ実験をしてみようと通信室から強奪…もとい借りてきた秘密兵器をお披露目した。 「わ〜ぱちぱちぱち」 「…一体何年前の最新技術ですの?まったく今時そんな録音機器ひとつで舞い上がるなんて底が知れますわよ」 「じゃあサーニャよろしくね〜」 「…うん」 「無視しないでくださいまし!無視しないでくださいまし!」 ペリーヌは相変わらず素直じゃない。 口を開けば嫌味が出てしまう体質か何かじゃないだろうか。 「聞きたくないんだったら帰って寝てもいいんだぞ〜?どうせ録音するんだしさ」 「ぐむ…ま、まぁせっかくここまで出向いたんですからその最新技術とやらをこの目で確かめさせて頂きますわ!」 「耳で、の間違いじゃないの〜?」 「むっ…きぃいいいい!!揚げ足取るのもいい加減にして下さいませんこと!?」 「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いて…」 リーネが耐えかねて制止に入る。 いやーホントペリーヌはからかい甲斐があって飽きないなぁ。 「…用意できました…」 耳と尻尾とアンテナを生やしたサーニャが準備万端、といった面持ちであたし達を見ていた。 「さんきゅーサーニャ。それじゃ始めますか」 「よしかちゃんには悪いけどやっぱりわくわくしちゃうなぁ」 「は、早くしてくださいまし!」 「お〜?積極的じゃんペリーヌ」 「これは後々の参考に…って何を言わせるんですの!?」 「ふ、二人ともぉ〜」 「…いきます…」 サーニャの輪郭が淡い光を帯びた。 あたし達が取り囲んだレコーダーもつられて微かに発光し始める。 同時にあたし達のインカムからも会話が聞こえてきた。 ダメだ。やっぱりこいつらまったく進展しやがらねぇ。 プラトニックすぎて聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる。 最初のうちこそきゃあきゃあと昼間のシャーリーみたいに盛り上がっていたものの、 夜も更けてきたせいかリーネとペリーヌはあえなく撃沈。 あたしのベッドで仲良く寝息を立てている始末だ。 かくいうあたしも眠気が強くなってきた。 「…おしまいにする?」 サーニャが見かねて聞いてくる。 「ん…もうちょいがんばる…」 頑張ったところで見返りなんて無いんだけど、ここまで来たらもう意地みたいなもんだった。 「それよりサーニャもキツイんじゃないの?もう2時間は魔力注ぎっぱなしだし」 言って考えて「うわぁ」と思った。 こいつら2時間延々喋りっぱなしじゃん…。 「…哨戒の時より効果範囲はずっと狭いから大丈夫…ストライカーユニットも履いてないし…」 そうだった。 この子はほとんど毎日暗い空で哨戒任務を続けてきたんだった。多くの場合たった一人で。 雨の日も雪の日も、予報が出ていなくたって、出現するかどうかもわからないネウロイの影を探して一人で飛んでいたんだ。 半端ない魔力と精神力だと思った。 昨日の昼の言葉も頷けるほどの。 「そっか。疲れたらやめちゃっても構わないから」 「…うん、ありがとう」 「礼を言うのはこっちだって」 なんかしんみりしていい雰囲気だと思ったけどやってる事は盗聴だったりする。 苦笑したあと、顔を振って眠気を飛ばしてからまた会話に耳を傾けた。 「…ふぅ…いっぱい喋ったから喉乾いちゃった」 「私も乾いたかも。何か飲むか?冷蔵庫にいろいろあった気がするけど…」 「あ、わたしが取ってくるからエイラさんはそのままでいいよ」 「えー私が取ってくるよー」 「エイラさんはわたしが帰ってきた時におかえり、って言って抱き止めて欲しいから待ってて、ね?」 「う…じゃあ待ってる」 「いってきます♪」 「…いってらっしゃい」 う る せ え え え え もう甘甘トークが『つまらない』から『腹が立つ』領域まで来ていた。 さすがのサーニャも軽く引いて苦笑いを浮かべている。 とりあえずもうちょっとしたらペリーヌとリーネを起こして部屋まで送って行って寝よう。そう決めた。 「〜♪えっと、どれがいいかな〜?…なんだろうこれ。さる…み…?黒いからコーラみたいなものかな?」 「ぶっ!?」 「…ハルトマンさん汚いよ…」 思わず吹き出したんだけど勢い余って正面で聞いていたサーニャにまでおツユが飛んでしまった。 ごめんサーニャ!でも謝ってる暇無い! 宮藤が読み上げた名前には心当たりがあった。 エイラがここへ転属になった時にスオムス時代の上官から半ば無理矢理押し付けられたとか言ってたサルミアッキウォッカ。 要するに酒。 エイラが飲まないって言うからたまにあたしが飲ませてもらってる。 引き取っておくべきだった…。 「宮藤それ酒だからダメだー!?」 「…??」 「うるさいですわ…すぅ」 「すやすや」 叫ぶあたし。驚くサーニャ。寝言を言うペリーヌ。無反応のリーネ。 あたしの部屋で叫んだところで宮藤には聞こえるはずもなく。 無情にもインカムからは宮藤のごくりごくりという飲下音だけが響いた。 ああ得体の知れない飲み物を匂いも確認しないで飲むのは危険だってば宮藤…。 この子絶対夏の日に冷蔵庫開けて麦茶かと思って一気飲みしたら濃縮三倍の麺つゆでしたとかそういうドジ踏むタイプの子だよ…。 「ぷはっ、甘くて美味し…」 台詞が途切れたかと思うとどさっという宮藤が倒れたと思われる音。 あんな強い酒を、恐らく一度も飲んだ事がないであろう15歳の女の子が一気飲みすれば、ぶっ倒れて当然だ。 「ミヤフジ!?」 「…芳佳ちゃん?」 「あああああ…えらいこっちゃ…」 と、とりあえずエイラもついてるし大丈夫…いや不安だ。 「どどど、どうしたんだよミヤフジ…ってゲェーッ!?アホネンのウォッカじゃねーか!?」 「きもちいー…エイラひゃんだいすきー」 「うわっ!酒くさっ!?…と、とにかく水を…」 「エイラひゃんちゅーしてちゅー、くちにー」 「だだだ、ダメだってばミヤフジ!そんなことしたら魔力が…退役するまで待つって約束したじゃないかー!」 うわわ…そこまで覚悟してたのかよ!今あたしすげー罪悪感に苛まれてるんですけど! なんか面白い状況になってるけどこれはどうしたらいいものか…。 「やだよぅ、わたしもう我慢できないもん…5年なんて長すぎて待てないよ…」 「そ、そりゃ私だってしたいけど…でも…」 「…じゃあ…して?」 「アワワワワワワワ」 あはは…やっぱヘタレイラだ。 「う…あ…や、やっぱりダメだミヤフジ!私達は世界の命運を…」 「隙ありっ!んっ」 「!!?!??!???」 うわやりやがった!酔った勢いとか感慨もくそもないよ!? 「んちゅ…んんぅ……ぷはっ」 「………う…ぁ…」 「えへへーしあわせー」 …ご馳走様でした。 もうおなかいっぱい。 そうエイラの部屋に向かって合掌した瞬間、ぱたりとエイラが倒れる音。 あぁそういえばあの夜も失神しまくってたなぁヘタレイラ。 「あれー?エイラさん寝ちゃったのー?…もーしょうがないなー」 ずるずると、たぶんベッドに運ぶ音。 酔ってんのに律儀だな…宮藤…。 「んしょ…おやすみなさいエイラさん…すぅ」 沈黙。 サーニャもあたしも後半はもう無言で聞いていた。 「あ、あははは…な、なんか凄かったねぇサーニャ?」 「…」 返事は無かった。 「サ、サーニャさん?」 呼びながら肩に触れてみる。 するとぐらっと揺れてそのまま倒れ込むサーニャ。 「…失神しとるがな…」 ふ、と息をついて思う。 どれだけ精神が強くても、やっぱりサーニャは13歳の女の子なんだ。 ぽりぽりと頭を掻いてタオルケットを3枚探す。 昨日の集会の時、シャーリーとトゥルーデが掃除をしてくれたので幸い部屋は綺麗な状態。タオルケットもすぐ見つかった。 「ま、ゆっくり成長したらいいと思うよ、サーニャ」 そう言って3人に掛けて、あたしも適当に雑魚寝することにした。 明日のみんなの反応が楽しみだ。 >サルミアッキ砕いたウォッカ飲まされるよしことか。 日曜昼前スレのネタをいただきました。ありがと「」っしーあとこんなんでごめん よく考えたらサーニャの魔法って電波を受信発信するんじゃなくて、あくまで遠くまで視ることができる魔法であって、 ラジオの音を拾ったりするのはウィッチーズに支給されてるインカムの性能なんじゃないかとか思い始めたのが8割方書けたあたり もういいや(泣きながら